オシャーンの日記編 (12) |
コーレニン南西部 時空移動ポイント 999代目の時代に飛び、話を聞いてこよう。 そう決意したサントは再びこの場所を訪れた。 時空移動ポイントである小さな場所に足を踏み入れる。 「プナハはこの魔法を魔方陣限定だと思っていたみたいだけど」 時空間移動の魔法は勿論、杖にも数式にも対応している。 サントは最初の時間移動の後、専用の数式を調べており、個人での時間移動には既にその数式を使っていた。 頭の中で数式を組み立て、呪文を唱える。 「イストリール」 999代目の時代・同場所 前回訪れた時のように、正面の壁の取っ手を掴み、横に引き開ける。 奥には、先客が居た。 壁にもたれかかって腕を組み、こちらを見つめていた。 黄寄りオレンジの癖毛に、ターコイズの瞳。 あの時に出会った、同魂系の後代。 まさにこれから会おうとしていた人物だった。 「い、いつから此処に?」 相手は溜息をついた。 「今来たとこ。魂の本でお前から聞いたんだよ。 もう一度この時代に来るって。 俺はいつも此処にいるとは限らないから、指定した日時を聞いた」 そう言って、手を差し出す。 「俺はフーラル・ウェイウィーア。 サントだろ、宜しくな。後でこの日時を控えておけよ」 サントは瞬きを繰り返しながら、手を握った。 2人は並んで座り、言葉を交わす。 「時間移動の魔法――…使ったことはね―な。 空間移動ならしょっちゅう使っているけど」 「コーレニン内の移動で?」 サントの問いかけにフーラルは口を噤む。 「…他時空?」 無言で頷く。 もしかして。 サントは、1000代目の時代で魂の本のウェイとウィーアから聞いた話を思い出す。 「998代目の時代でルートが開いたっていう、地球?」 肯定も否定もしなかった。 代わりに、 「その話は、世代交代で俺が魂の本に入ってからな」 とだけ返ってきた。 フーラルは伸びをし、壁にどっかりともたれる。 「ところでサント、 1000代目の時代に飛ぶんだろ。 オシャーンの日記にあった『100万年後』――」 「それを魂の本の僕が?」 フーラルは頷く。 「日記は読んだけど、サントが言っていたような書き込みは無かったんだよな。 嘘はついてね―だろうけどさ、『100万年後』については本当なんだろ?」 「僕はまだその出来事に立ち会ってはいないんだけどね。 日記には確かに書かれていたし、日記の主は嘘をつくような魔法族では無いと思う」 「根拠は?」 「勘」 サントの即答に、フーラルは長い溜息をついた。 「やっぱり俺、お前と同じ魂系なんだな」 微かな呟きに、サントは苦笑した。 「『100万年後』の出来事に戻るけど、いずれは立ち会うんだろうね。さっきの君の発言からだと」 フーラルは頷く。 「魂の本の中のサントが嘘をつくとは思えね―しな。根拠は勘。 俺がこの出来事に関わるかは知らね。 日記がどうとか、1000代目がどうとか、関係ね―事だし」 徐に体を起こす。 「でもさ、もし、万が一、首を突っ込むような事があったら、」 ゆっくりと手を差し出した。 「その… 宜しく頼む」 サントはしっかりと両手で握りしめた。 「もちろん。任せて」 |