転換石編 (19)
 

レイミンに向かって、階下のフォンエが強い口調で返す。
「連れて行くんならさっさと降りてくるがいいよ!」

ユイユが双子に振り向く。
「――って言っているけど、どうするの?
 さっきのお花はもう渡れないよ」

ロイシンがニカッと笑い胸を叩いた。
「任せて!大きなジグソーパズルピースで橋を造るから!」
階下に姿を見せた時のパズルピースを、他のひとも渡れるようにするとのことだ。
「でもロイシン。
 1人ずつ渡ったら時間が掛かって、ロイシンに無理をさせちゃうよ?」
レイミンの心配そうな表情。
「3人が渡れるぐらいの、パズルピースの橋か―」
「おまけにそれぞれのピースが動かないように鍵を掛けて―、」
「扉より大掛かりかも!」
「いよいよ私達の魔法道具の出番ね!」
双子は各々の万華鏡を取り出した。

レイミンは万華鏡の中の月の満ち欠けで、
ロイシンは万華鏡の中の空模様で、
各々の魔力の波長を測る。

「その都度のコンディションってものがあるからさ!」
「強力な魔法を使う時はね、タイミングが必要なのよ!」

――タイミング。

ユイユは徐に口を開く。
「タイミングって、魔法を掛ける時の2人だけじゃなくて、
 きっと2人が魔法で造りだす橋にもあるよね…
 『渡っても大丈夫な、ベストタイミング』」

双子は顔を見合わせる。
「橋を造って鍵を掛けるまではそれぞれで出来るけど―、」
「お互いの魔法を維持する間もコンディションってあるわよね」

「2人の魔力の波長と、生み出す橋のコンディションの重なるタイミングを見つけよう。
 僕が合図を出すよ」

双子が頷き合う。
万華鏡で各々の魔力の波長を確かめ、床が途切れる手前ぎりぎりまで進み出た。

ロイシンが手を前に差し出し、足下に魔方陣が広がる。
次々にパズルピースが飛び出し、凹凸が合わさり繋がれてゆく。

階下に届くとレイミンが無数の鍵を橋に向かって放った。

ユイユは、双子の魔法道具と、生み出された橋の全てが見える位置に立つ。
手に握る杖と転換石それぞれに語りかける。
「一度に沢山の『声』を聞いたら、それこそ杖が壊れてしまうと思うんだ。
 だから、転換石にも杖として協力して欲しい。
 僕の杖を通じてレイミンとロイシンの魔法道具の、
 転換石を通じてパズルピースの橋の、『声』を聞きたいんだ」
「任せて、ユイユ!」
転換石に取り憑いた精霊が返す。
杖からも、直接言葉には出されなかったが、同意の意を汲み取った。

ユイユはじっと集中する。
「(月の万華鏡も、空の万華鏡も、橋も、ここぞという瞬間を僕に教えて)」
転換石を探し始めた最初の頃の、魔法道具が集められた部屋での出来事を思い出す。
自慢の動体視力も、物の動きのタイミングを見定めるという意味で広義の『声を聞く』ことだったのだろう。

――

――

「3、2、1、 行こう!」

ユイユの合図と同時に双子が駆け出し、
双子に遅れてユイユが渡り始める。
3人一目散に走り渡り、

双子が渡り終えて橋が消えかけたが、

最後にユイユは大きくジャンプし、階下に降り立った。

「皆あんな無茶振りをして!
 3人でどうにかするのかなって見ていたけどさ!
 言ってくれれば橋くらい造ったのに!」
フォンエが枯れかけの声で訴えながら3人に駆け寄った。





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