転換石編 (12) |
コーレニン西部 工房 「ふ―――ん…、で?」 「で、って言われても」 ユイユは肩をこわばらせる。 「当時そのままの『転換石』は無かった、 けどその根幹となる物は残っていた、 今それを手にしている、 で、どうしたいの?」 フォンエはユイユに詰め寄る。 「また『転換石』として使えるようにしたいなら、出来ないことも無いよ。 だけど、」 「だけど?」 「そうしたいなら、悪いけど他を当たるがいいよ?」 ――え。 「どうしちゃったのさフォンエ?!」 「う―ん、私だって本来なら、その魔法道具をこねくり回したいところなんだけどねぇ」 わきわきと動かす手を、ユイユの持つ魔法道具に向ける。 「そうそう、今後この工房に来ても、私がキミに出来ることは無いからね。 ま―、杖の軽いメンテナンスぐらいはしてあげなくもないけどさ。 それから、飴を食べに来るのは歓迎するよ。 …あああっ、もうっ、その魔法道具を改造したくてうずうずするってのに!」 フォンエは力強く机を叩いた。 「僕だってやってくれるんならお願いしたいよ! なんで? 何がいけないの?!」 「言えたもんなら苦労しないよ全く!」 収拾がつかなくなりかけたその時、工房の扉が開いた。 「やぁフォンエにユイユ、調子は――…あまり良くないみたい?」 マホガニーだった。 ひたすら訴え続けるフォンエの視線から、マホガニーは察した。 「…じゃあ、ユイユにはまた後で話をしに行くから」 そう言って促されたので、渋々と扉に向かう。 その際、マホガニーは忠告した。 「くれぐれも、その魔法道具を手放さないようにね」 ユイユが工房から離れたのを確認し、マホガニーは扉を閉める。 フォンエは、ぽつりとこぼした。 「あの双子をどうにかできりゃ、私はいくらでもユイユに荷担するよ」 「やっぱりレイミンとロイシンだったか〜」 マホガニーは苦笑する。 「興味あり気だったもんね、傍から見て気付いていたけど。 それで、あの2人がいると貴方が協力できないのは何故?」 「… ルーに突き出すって言われた」 「――!」 フォンエは目を伏せた。 「ちゃんとした形で私の存在を知られたら、もうコーレニンにいられないよ。 …こき使われるのやだもん」 「それは本音?」 「えっ?」 マホガニーの眼差しは真剣だった。 「貴方には、もっと深いところに本音があるように聞こえたけど」 「…」 「言いたくないなら、無理に言わなくても」 「ううん、言わせて」 ルーの魂系繋がり、というのもあったかもしれない。 いっそ吐き出してしまいたい、そんな気持ちが強かった。 ゆっくりと、言葉にしていく。 「ルーは…、私のことを魔法族として育ててくれたのに、私は精霊だった。 それを知ったとき、ルーのことを裏切ったかのような気持ちになったよ。 もし私が再び姿を現しても、受け入れて貰えるのか分からない。 …見捨てられるかもしれない、コーレニンから追い出されるかもしれない。 本当は、みんなと同じようにコーレニンにいたいのに」 フォンエが不安げに見上げたとき、マホガニーは穏やかに微笑んだ。 「言ってくれてありがとう」 少なくとも、目の前の魔法族には受け入れて貰えた。 安堵や嬉しさが入り交じり、フォンエは顔を赤らめて頷く。 「でも『こき使われるかもしれない』ってのも嘘じゃないよ。 ルーのことはよく分からないし」 長い間ルーを避けてきたから、680代目当時よりも、ますますルーのことが分からない。 「私のこと…本当に覚えているのかな…」 |