| オシャーンの日記編 (3) |
コーレニン337代目の時代 南西部 時空移動ポイント 「1000代目の時代を下見する」と言い出したプナハは、「一緒に行きましょう!」という展開に持っていこうとした。 サントは笑いはしたのだが、大きな一歩を廊下に踏み出して、くるりと向き直る。 「プナハ一人で行った方がいいと思うよ」 「え」 プナハはきょとんとした後、すぐに焦りの表情に変わった。 「えぇぇぇ!?ちょっと待ってくださいよサントさん! なんですかその展開!? ラスボスですか? この先にラスボスでも待っているんですか!?」 「ラスボスだって!? ラスボスは皆で戦うものだよ!?」 わたわたと慌てるプナハを、サントはなんとかなだめようと頑張る。 「ところでサントさん」 「何?」 「ラスボスって… ルー様ですか?」 「…」 サントは大広間のある方向を見やった。 そしてまた元の向きに戻る。 「ルーがいなくなったらこの世界がどうなるか分からない。 もしそれで僕達もいなくなるんだったら、僕達はラスボスの臣下、ってことになるかな」 そう言ってサントは笑い、「図書館に行くから」と行ってしまった。 結局、プナハは『一人で行く』ことの意味を聞かずじまいになってしまった。 コーレニン図書館 サントはオレンジ表紙の魂の本を机の上に置き、最初のページを開いた。 セピア調のウェイがにっこり微笑んで何かを言おうとしたその時、 「やっほ―!サント―!」 ウィーアが手をぶんぶん振りながら、ウェイの写真に割り込んできた。 「あ、2人いるなら丁度いいや! 1000代目の時代に何が起きたか…教えてくれないかな」 サントの率直な問いに、ウェイとウィーアは顔を見合わせる。 先に答えたのはウェイだった。 「教えてあげたいのは山々なんだけれども… 未来のことを話すのは良くないことだと思う。」 「え―でもさぁウェイ、時間移動で未来を見れるからいいんじゃないの?」 確かにサントは見てしまった。 自分のだいぶ後の、子孫というか来世というか。 「ん―…そうかもしれないけど、今回の事を話すのは良くないと思う。 そもそも、時間移動もむやみにやったりしちゃいけない事なんだよ。 空間移動の場合は、同じ時間の上だから問題無いんだけど…」 「でもウェイぃ…」 「じゃぁ『今』のことを話すのは問題無い、ってことだ」 サントが笑いながら話すので、ウェイとウィーアはぽか―んとしてしまった。 「あっ」と、ウェイ。 「おぉっ」と、ウィーア。 サントが駆け足で南部の時空移動ポイントに戻ったとき、すでにプナハはそこにはいなかった。 * 数分前 コーレニン南西部 時空移動ポイント サントが行ってしまった後、プナハはぽつんと一人そこにいた。 「サントさん…まるで『1抜けた』と言ってるみたいでした… …どうして私一人で行く方がいいのでしょうか?」 分からない。 けど、 「一人で行く方がいいのなら、行くしかないです、ね!」 プナハはオシャーンの日記をしっかり抱え、「イストリール」と唱えた。 コーレニン1000代目の時代 「来ました…今度こそ1000代目の時代だと嬉しいです」 自分と同じ、精霊混じりに会いたい。 そもそもの目的を確認し、廊下へと大きな一歩を踏み出…そうとし、慌ててその足をひっこめる。 「危なかったです… 私は気にしていませんが、こんな外見で堂々と歩かれたら皆びっくりしちゃいます」 そろそろと廊下の左右を確認し、改めて大きな一歩をゆっくりと踏み出す。 「ふぅ〜… 最初の関門突破です!」 「大層な関門だなこりゃ」 「そうですよ!これでも勇気がいるんですよ… …って、あら?」 声のした方を見る。 側に立っていた者の桃色髪が、ぱっと目に入った。 「――…どちら様ですか?」 「『どちら様ですか?』は無いだろう、カシェパースだよカシェパース!」 相手は頭から湯気をすこん、すこん、と出さんばかりに、かなりカンカンだ。 プナハ少々思案。 「…… …あっ、カシェさん!…だと思ったんですけど、」 「『思ったんですけど』は余分!」 「…思ったんですけど!…でも337代目のカシェさんが1000代目にいらっしゃる筈は」 プナハは強引に話を進める。 「じゃぁなんでお前が此処にいるんだよ!」 「えっ?あ、… …あぁ、はい!あ、カシェさんであってますか!」 「やっと気付いたか…」 カシェは苛々通り越して呆れてしまった。 プナハは微塵も罪悪感を感じていないようで、カシェは「これだからつき合いにくいんだよな…」と呟いた。 心の中で、「エミウルもな」と付け足しておく。 そして、思い出す。 「あ、そうだその日記――」 「えぇ!?何で私がオシャーンさんの日記を持っていることを知っているんですか!?」 「…いや、そんなに堂々と抱えられていたら誰でも気付くだろう」 プナハが日記の現在の所持者であることは、もうとっくに知っていたのではあるが。 気を取り直して、カシェは話を続ける。 「その日記―― 俺に渡す気は無いか?」 「…嫌です」 「…何だって?」 「嫌だと言ったら…嫌なんです」 プナハの頑固な態度をしめたと思ったのか、カシェはそれに付け入ろうとする。 「だったら何故? お前の目的はこの日記とは無関係なんだろう?」 自分の目的をカシェに話した覚えは無い。流石のプナハも警戒し始める。 「無関係なこと…無いです」 「いや、無関係と見たね。この日記に載っている時間移動の方法を使っただけだろ?」 そんなことも、話した覚えは無い。 「だったら、…カシェさんはどうしてその日記が欲しいんですか?」 「俺じゃないさ。それを探しているオシャーンの魂系の奴がいる。そいつに返してやるだけさ」 その言葉を聞いてプナハは納得したのか、すっかり警戒心は無くなっていた。 「あ!だったら仕方ないです! オシャーンさんの日記ですから、その魂系の方が探すのも当然ですよね!」 そう言って、プナハはあっさりと日記をカシェの手に渡してしまった。 プナハがすたすたと歩いていってしまった後の廊下で、カシェはぱらぱらと日記のページをめくる。 「俺がエミウルに渡すわけ無いだろ、馬―鹿」 |