| ズィナ編 プロローグ |
コーレニン1代目 シューナは、魔法合成書をぱたんと閉じた。 そして、満足そうにほくそ笑んだ。 「――完了です」 ランプの明かりが薄暗く灯っている部屋の中央に、シューナは立っていた。 ビーカーやフラスコ、薬瓶、書物がたくさんあるが、それらは全てきっちりと整頓されている。 その中の『書物』とは、どの魔法とどの魔法とを合成してどの魔法がつくられるか――それを自身で研究し、記録したものだ。 シューナは魔法合成を得意とし、相棒の魔法道具は『魔法合成書』である。 呪文や魔方陣を書き込んで閉じて魔法合成を行う。それが合成書の主な使い方だ。 今回の魔法合成でシューナがつくり出した魔法は、 『未来の自分の魂系の者の記憶を、自分の記憶に置き換える』 つまり、 「『乗っ取り』と言われても仕方ありませんがね。」 ――しかし、私はどうしても確かめたい。 この一面宮殿な世界に、果たして『変化』というものがあるのか、ということを。 これまで1000年近く生きてきたが、『変化』は感じられなかった。 そんな世界が何らかの形で『変化』を見せる時が来るのだろうか―― 今日は、魔法族達が数え年で1000歳を迎えた年の末日。 コーレニン始まって以来初めての『世代交代』の日だった。 これは後の世代の習慣ともなっていくのだが、この日魔法族達は、ルーがいるコーレニン中央部の大広間に集まり、お互い別れを惜しんだりして、夜に一斉に『世代交代』を起こすのだった。 その世代の個体はただの魂へと戻り、記憶は図書館にあるそれぞれの魂系の本に収められる。 何もかも初めてだった1代目の『世代交代』の日も、大広間には皆集まっていた。 どうやらルーは大雑把になら未来を読めるらしく、皆に招集をかけていたようだった。 シューナにも勿論、招集が掛かっていた。 しかし、シューナは大広間には行かなかった。 その代わりに、先刻からずっと閉じてあった合成書を開いて呪文を唱える。 「ディザ・クールウジポ」 夜だった。 大広間では、皆が『世代交代』を終えていた。 それはシューナも同様だった。 シューナが選んだ『未来の自分の魂系』は、1000代目のシューナの魂系。 コーレニン1000代目の時代最初の年の12月9日、ルーはその日に生まれた者にこう名付けた。 ズィナ、と。 ルーは懐かしそうに遠くを見つめた。 「ズィナ・シューナ…か。そういえばシューナが生まれた日も12月9日だったな…」 |